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日本文学科の学生が卒業論文の準備段階で読むべき手引き書


by la-fida-nifa

2,日本文学科 基本文献ガイド          


2 日本文学科 基本文献ガイド


日本文学科でレポート・卒業論文を執筆する学生が参照すべき、基本的な辞書・事典・注釈書・論文集などを紹介する。

【a】上代・中古・中世・近世の作品について調べる
①大曾根章介ほか 編『日本古典文学大事典』(明治書院)
②『日本古典文学大辞典』全6冊(岩波書店)
③編集委員会 編『和歌文学大辞典』(古典ライブラリー)
①②③は、古典文学を概説した事典。研究史も確認できる。なお、個別の事典として、『万葉集鑑賞事典』『枕草子大事典』『源氏物語事典』『平家物語大事典』『能・狂言事典』『お伽草子事典』『上田秋成研究事典』などもある。


【b】近代・現代の作品・作家について調べる
④三好行雄ほか 編『日本現代文学大事典【作品編】【人名・事項編】』全2冊(明治書院)
⑤日本近代文学館 編『日本近代文学大事典』全6冊(講談社)    
⑥浅井清・佐藤勝 編『日本現代小説大事典 増補縮刷版』(明治書院)
④⑤⑥は、近現代文学を概説した事典。研究史も確認できる。なお、個別の事典として、『漱石辞典』『芥川龍之介全作品事典』『川端康成全作品研究事典』『太宰治大事典』『村上春樹語辞典』『日本女性文学大事典』などもある。


【c】ことば(日本語・漢語)を調べる
⑦『日本国語大辞典 第2版』全13冊+別巻1冊(小学館)→《ジャパンナレッジ》で検索可能 
⑧中村幸彦ほか 編『角川 古語大辞典』全5冊(角川書店)→《ジャパンナレッジ》で検索可能
⑨中田祝夫ほか 編『小学館 古語大辞典』(小学館)    
⑩久保田淳・馬場あき子 編『歌ことば歌枕大辞典』(角川書店)
⑪佐藤武義・前田富祺 監修『日本語大事典』全2冊(朝倉書店)       
⑫日本語学会 編『日本語学大辞典』(東京堂出版)
⑬飛田良文 編『日本語学研究事典』(明治書院)        
⑭尾崎雄二郎ほか 編『角川 大字源』(角川書店)     
⑮諸橋轍次 編『大漢和辞典』全12冊+別巻2冊+補巻1冊(大修館書店)
⑯『漢語大詞典』全12冊+別巻1冊(漢語大詞典出版社)→CDROM版あり
⑦は、あらゆる古語・現代語を網羅した、最大の日本語辞典。
⑧⑨は、用例が豊富な、巨大古語辞典。
⑩は、地名・植物・動物・説話を解説した辞典。
⑪⑫⑬は、最新の研究成果に基づく、日本語学の事典。
⑭⑮⑯は、用例が豊富で解説が詳しい、漢語(漢字)の辞典。


【d】歴史上の人物・事件・政治・宗教などを調べる
⑰『国史大辞典』全15冊+別巻2冊(吉川弘文館)→《ジャパンナレッジ》で検索可能
⑱『角川新版 日本史辞典』(角川書店)
⑲『日本の歴史』シリーズ(講談社学術文庫)
⑳『天皇の歴史』シリーズ(講談社学術文庫)
⑰⑱は、歴史上の人物・事件などを調べるときに引く日本史事典。
⑲⑳は、時代別の日本史読み物。年表・系図・参考文献一覧など使い勝手が良い。目次を見て拾い読みしてみよう。


【e】古典文学の原文・注釈・現代語訳を見る
◆『新編日本古典文学全集』全88冊(小学館)→《ジャパンナレッジ》で検索可能
◆『新潮日本古典集成』全94冊(新潮社)
◆『新日本古典文学大系』全100冊+別巻5冊(岩波書店)
◆『日本古典文学大系』全100冊+別巻2冊(岩波書店)
これらは、上代・中古・中世・近世文学の原文を収め、現代語訳や解説を付した注釈書シリーズ。
他に、角川ソフィア文庫・講談社学術文庫・ちくま学芸文庫・岩波文庫からも、注釈書が出されている。
和歌作品においては、『和歌文学大系』『私家集全釈叢書』『歌論歌学集成』などの選集がある。
中世作品においては、『中世の文学』『中世王朝物語全集』などの選集がある。
近世作品においては、『近松全集』『本居宣長全集』などの全集がある。『古典俳文学大系』『叢書江戸文庫』『江戸怪異綺想文芸大系』などの選集もある。

なお、和歌作品については、以下のCDROMやウェブサイトで、全文検索が可能。
◆『新編 国歌大観 CDROM版』(角川学芸出版)→《ジャパンナレッジ》で検索可能
◆『新編 私家集大成 CDROM版』(エムワイ企画)→古典ライブラリー《日本文学WEB図書館》


【f】中国古典の原文・注釈・日本語訳を見る
◆『新釈漢文大系』全120冊+別巻1冊(明治書院)
◆『全釈漢文大系』全33冊(集英社)
◆『新編漢文選』全10冊(明治書院)
◆『中国古典小説選』全12冊(明治書院)
これらは、中国古典の原文を収め、語釈や日本語訳を付した注釈書シリーズ。中でも、『新釈漢文大系』と『全釈漢文大系』は、巻末に語句索引が付いていて、漢語を調べるときに役立つ。
他に、岩波文庫・講談社学術文庫・東洋文庫からも、中国古典の日本語訳や注釈書が出されている。
なお、検索のツールとしては、以下の電子版で、厖大な作品群を、全文検索できる。
◆《中国基本古籍庫》
◆《文淵閣四庫全書》


【g】近現代文学の原文・注釈を見る
近現代文学を対象として論文を書く場合は、個人全集をテキストとして用いるのが常道である。『円朝全集』『定本 漱石全集』『新校本 宮澤賢治全集』『定本 夢野久作全集』『決定版 三島由紀夫全集』など。
全集のない作家の作品やマイナーな稀少作品は、以下のシリーズで読むことができる。
◆『新日本古典文学大系 明治編』全30冊(岩波書店)
◆『明治文学全集』全99冊+別巻1冊(筑摩書房)
◆『日本近代文学大系』全60冊+別巻1冊(角川書店)
◆『編年体 大正文学全集』全15冊+別巻1冊(ゆまに書房)


【h】文学研究の先行論文を読んでみる
日本文学研究の論文を読みたいとき・研究史を知りたいときは、以下のシリーズが便利である。
◆久保田淳ほか 編『岩波講座 日本文学史』全17冊+別巻1冊(岩波書店)
◆『日本文学研究論文集成』全18冊(若草書房)
◆『日本文学研究大成』全22冊(国書刊行会)
◆『日本文学研究資料新集』全30冊(有精堂)
いずれも、ジャンルごと・作品ごと・作家ごとに、重要な論文・俯瞰的な解説を収めている。
なお、研究入門書として、以下のシリーズも推薦しておきたい。多くの写真と有益な解説を載せている。
◆『別冊太陽』(平凡社)毎月刊行 ……『世阿弥』『泉鏡花』『中上健次』など
◆『文藝別冊』(河出書房新社)毎月刊行 ……『谷崎潤一郎』『武田百合子』『石牟礼道子』など


【i】日本語研究の先行論文を読んでみる
日本語研究の論文を読みたいとき・研究史を知りたいときは、以下のシリーズが便利である。
◆『朝倉日本語講座』全10冊(朝倉書店)  
◆『現代日本語講座』全6冊(明治書院)
◆『現代日本語文法』全7冊(くろしお出版)
◆『シリーズ日本語史』全4冊(岩波書店)
いずれも、テーマごとに、研究史を踏まえた解説・問題提起的な論文を収めている。
なお、研究入門書として、以下の雑誌も推薦しておきたい。毎月、特集を組み、最新の論点を紹介している。
◆『日本語学』(明治書院)毎月刊行 ……「平成時代のことばと文字」「いま外来語を考える」など


【j】インターネットで論文を捜す??
国文学研究資料館の《国文学論文目録データベース》は、日本文学・日本語学・国語教育に関する論文を検索できる便利なツールである(http://www.nijl.ac.jp/pages/database/)。
国立情報学研究所の《サイニイ》は、さまざまな論文が検索できるツールである(http://ci.nii.ac.jp/)。

たしかに、右の2つウェブサイトは、便利ではある。しかし、こうした検索システムを使うと、何百もの論文が挙がって来てしまい、困惑するだろう。ヒットする論文は、玉石混淆である。信頼に足る論文を見つけ出すのは、至難の業である
インターネット上の情報に振り回されるのは、愚かしい。研究史上の重要論文や最新の研究成果はネット上には存在していない、と考えた方がよいのだ。
卒業論文に取り組む学生は、まずは、前項「h」「i」に挙げた講座ものや精選論文集を手に取るべきである。そして、そこで紹介されている他の論文を、イモズル式に、図書館で捜して読むべきである。
パソコンの前でネットサーフィンをしても、研究は進まない。図書館でブックサーフィンをする方が、はるかに効果的で有益である。
                          (以上、文責:加藤昌嘉)





by la-fida-nifa | 2010-09-22 07:10 | 日本文学科 基本文献